【フォートナイト】Epic Gamesの「AI加速」方針に反発広がる、CEOは「2016年には戻れない」開発体制を大きく転換へ

Epic Gamesの「AI加速」方針に反発広がる、CEOは「2016年には戻れない」開発体制を大きく転換へ

『フォートナイト』やUnreal Engineを手がけるEpic Gamesが、ゲーム開発におけるAI活用を大幅に加速させる方針を打ち出し、ゲーム業界やコミュニティで大きな議論を呼んでいます。

Epic Games CEOのTim Sweeney氏は2026年10月12日、同社で「大規模なピボット」が進んでいることを明かし、最大限のAI活用に向けて開発者の配置や開発体制を再編していると説明しました。

Sweeney氏は今回の方針について、「同じものをより少ない人数で作ること」が目的ではないと強調。AIを活用することで、Epic Gamesの開発者が「より多く、より良いもの」を作れるようにし、その恩恵をUnreal Engineを利用する他の開発チームにも広げたいとしています。

しかし、その直前にはDisneyとの共同プロジェクトで「AIファースト」の開発方針が導入され、「手書きのコードはもう書かない」といった内部指示が出されたとBloombergが報じており、Sweeney氏の発言とあわせて強い反発が広がっています。

Disneyとのゲーム開発で「AIファースト」へ転換と報道

今回の議論の発端となったのは、BloombergのJason Schreier記者による報道です。

Bloombergによると、Epic GamesはDisneyとの共同プロジェクトとして、Marvelや『スター・ウォーズ』のキャラクターが登場する未発表のシューティングゲームを開発していました。当初は2027年3月頃のリリースを予定していたものの、現在は延期され、新たな発売日は決まっていないとされています。

さらに開発チームには、「AIファースト」の制作モデルへ切り替えるよう指示が出されたと報じられています。

Bloombergが確認した内部メッセージでは、プロジェクトのディレクターが「No more hand-written code(手書きのコードはもう不要)」と伝えたほか、アートについても「full AI workflows」を利用する方針が示されたとされています。AnthropicのAI「Claude」などを利用し、人間の開発者はAIによる出力を管理・修正しながら開発を進める形になると報じられています。

一方、これらはBloombergが関係者や内部メッセージをもとに報じた内容であり、Epic Gamesが「すべてのゲーム開発で人間によるコードやアート制作を禁止する」と公式発表したものではありません。

Epic Gamesの広報担当Jake Jones氏は、同社が「AI加速型の開発」を取り入れていることを認めつつ、「Epicの開発者が、私たちの行うすべてのことにおけるビジョンとクリエイティブの原動力である」と説明しています。

Sweeney氏「Epicでは大規模なピボットが進んでいる」

Bloombergの報道後、Sweeney氏自身もEpic Games全体でAI活用を大きく進めていることをXで明らかにしました。

Sweeney氏は、Epic Gamesでは現在「最大限のAI加速」に向けて開発者を移動させ、開発体制を組み替える大規模な方向転換が進んでいると説明しています。

ただし、その目的については「同じことをより少ない人数で行うためではない」と明確に否定。現在働いている開発者がAIを使うことで、より多く、より高品質なゲームや技術を作れるようにすることが狙いだとしています。

また、Epic GamesだけでAIを活用するのではなく、Unreal Engineを通して他社のゲーム開発にも技術を広げていく考えを示しました。

「2016年には戻れない」批判にも反論

Sweeney氏の発言には、開発者やユーザーから「現場の空気を読めていない」といった批判も寄せられています。

これに対してSweeney氏は、「多くの人は2016年に戻りたいと思っているが、そうはならない」という趣旨の発言を投稿しました。

Epic Gamesはゲーム業界へツールや技術を提供する立場であるため、過去の制作方法を維持するのではなく、「現在」と「まもなくやってくる未来」に合わせて技術を設計することが仕事だと説明。自身はAIの将来について楽観的であり、クリエイターの力を高める技術になると考えているとしています。

また、Sweeney氏は「より控えめな目標」として、「AI革命を生き延びること」を挙げています。そのうえでEpic Games自身だけでなく、他の開発者もAI時代へ適応できるよう支援し、より良いコードやコンテンツをより速く作れるようにしたいとの考えを示しました。

AIで「アイデアからプレイテストまで」を高速化

Sweeney氏が特に期待しているのが、アイデアを実際に遊べる状態へ持っていくまでの時間短縮です。

ゲーム開発では、企画したアイデアを試作品として実際に動かし、プレイテストするまでに多くの時間や人員が必要です。Sweeney氏は、近年のAAAタイトルの失敗には、開発途中で十分なプレイテストができないまま制作が進んでしまう問題もあるとの考えを示しています。

AIを活用して試作品を短期間で作れるようになれば、より多くのアイデアを実際に試し、面白くないものを早い段階で修正・破棄できるという考えです。

同氏によると、現在でもAIによる作業速度の向上は分野によって約20%から最大5倍程度に達しており、2027年の同時期には、多くの開発領域で2026年1月と比較して3倍以上の高速化が実現すると予想しています。

約半年前には1,000人超をレイオフ

Sweeney氏が「少ない人数で同じものを作るためではない」と繰り返し強調している一方で、今回の発言が強い反発を招いている理由の一つが、2026年3月に行われた大規模な人員削減です。

Epic Gamesは3月24日、1,000人を超える従業員を解雇すると発表しました。当時の従業員数から約20%にあたる規模で、Fortniteのエンゲージメントが2025年から低下し、会社の支出が収益を大きく上回る状況になっていたことなどが理由として説明されています。

ただしSweeney氏は当時、「このレイオフはAIとは関係ない」と明言しています。

AIによって生産性が向上するのであれば、「できる限り多くの優秀な開発者に素晴らしいコンテンツや技術を作ってもらいたい」とも説明していました。

今回も同様に人員削減を目的としたAI導入ではないと説明していますが、大規模レイオフから約半年後に「最大限のAI加速」へ開発体制を転換すると発表したことで、「将来的にさらに人間の仕事が減るのではないか」という懸念につながっています。

コードやアートへのAI利用に反発

特に議論となっているのが、Bloombergが報じた「手書きコードはもう不要」「アートはフルAIワークフローで生成する」という内部方針です。

AIを補助ツールとして利用するだけではなく、コードやアート制作の中心にAIを据える方針と受け取られたことで、プログラマーやアーティストの役割が大きく変わるのではないかとの懸念が広がっています。Bloombergは、方針を伝えられた一部スタッフが驚いたとも報じています。

また、生成AIについては学習データや著作権、クリエイターへの補償などを巡る議論も続いており、人間が制作した作品の価値を軽視することにつながるのではないかという批判もあります。

一方で、AIによって少人数のチームでも大規模なゲームを制作できる可能性や、単純作業を減らして人間がゲームデザインやクリエイティブな判断へ集中できるようになるとして、AI活用を支持する意見もあります。

DisneyはEpic Gamesに15億ドルを投資

今回「AIファースト」への転換が報じられたプロジェクトは、Epic GamesとDisneyによる大型提携の一部です。

Disneyは2024年、Epic Gamesへ15億ドルを投資し、Fortniteと連携する新たなゲーム・エンターテインメントユニバースを共同開発すると発表しました。

Disney、Pixar、Marvel、『スター・ウォーズ』『アバター』などの作品やキャラクターを活用し、プレイヤーが遊ぶだけでなく、視聴、ショッピング、コンテンツ制作などもできる長期的なプロジェクトとして発表されています。

その大型プロジェクトの一つとされるゲームが延期され、開発体制を「AIファースト」へ大きく変更したと報じられたことで、今回の方針転換はEpic GamesだけでなくDisneyとの今後の展開にも影響する可能性があります。

Epic Gamesのゲーム開発は大きく変わるのか

Epic GamesはこれまでもAI活用に積極的な姿勢を示してきましたが、今回の発言は単なる新しいツールの導入に留まらず、開発体制そのものをAI中心へ再設計しようとしていることを示しています。

Sweeney氏は「少ない人数で同じものを作る」ことではなく、人間の開発者がAIを利用してより多く、より良いものを作ることが目的だと主張しています。

一方で、Disneyプロジェクトで報じられた「AIファースト」の指示や、わずか半年前に1,000人以上が対象となったレイオフもあり、雇用やゲームの品質、人間のクリエイターが担う役割を巡っては強い懸念も残っています。

さらにEpic GamesはUnreal Engineを世界中の開発者へ提供する企業でもあります。今回の「大規模なピボット」がEpic Games社内だけに留まらず、Unreal Engineを利用するゲーム業界全体の開発方法にまで広がっていくのか、今後の動向が注目されます。

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